エンバーミングとは?必要なケース・手順・費用相場について
公開日:2023年1月9日
ご葬儀に関連して「エンバーミング」という言葉を聞いたことがあり、どのようなものだろうと関心をお持ちの方は多いかもしれません。
当記事では、エンバーミングの意味、どんな時に必要なのか、さらに手順や費用について解説します。
エンバーミングについて知りたい方、エンバーミングを検討されている方はぜひ最後までお読みください。
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エンバーミングとは?行なう理由は?
エンバーミングとは、ご遺体の長期保存(およそ10~14日)を可能にする技術のことで、日本語では「遺体衛生保全」といいます。
ご遺体を消毒・殺菌して科学的な防腐処置を施し、必要に応じて修復もします。
エンバーミングを行なうのは、エンバーマーと呼ばれる有資格者です。
IFSA(一般社団法人 日本遺体衛生保全協会)の「エンバーマー資格試験」に合格した方だけが、エンバーミングを行なえます。
もともと、土葬が基本の国では主にご遺体からの感染を防ぐために、エンバーミングが行なわれてきました。
ただ、近年はアメリカなどでも火葬が増えつつあるため、エンバーミングは感染症防止だけでなく、公衆衛生に配慮し安全に葬儀を実施するために行なうものとも考えられています。
ちなみに現在の日本において、エンバーミングは一般的に行なわれるものとはいえません。
というのも、日本は火葬文化の国であり、ご遺体を長期保存するケースも稀なため、感染症防止の観点ではほとんど必要性がないからです。
しかし、なんらかの事情でご遺体を長期保存する場合や、火葬までの日数を必要とする場合などは、エンバーミングによってより良いご葬儀を実現できるケースもあります。
ご遺体を衛生的かつ美しく長期保存できる
エンバーミングとは具体的に何をするのかというと、ご遺体を消毒・殺菌したのち、血液を防腐剤などと入れ替えます。
この処置により、ご遺体を衛生的に長期間(およそ10~14日)常温で保存できます。
そのため、亡くなってからご葬儀までが長い場合でもご遺体の腐敗が進むことなく、臭いもほとんど感じない状態を保つことができます。
エンバーミングを行なうとドライアイスや冷蔵庫を使用する必要がないため、ドライアイスを長時間あてることによってできる皮膚の黒ずみも回避できます。
※故人様の状態によってはドライアイスの併用を依頼する場合もあります。
また、必要に応じてご遺体の損傷個所の修復も行ないます。
解剖をされているご遺体や、点滴や薬の副作用で水泡ができている場合、交通事故などで通常なら拝顔が不可能な場合などでも、極力ご生前の状態に近づけるよう処置を行ないます。
ただし、ご遺体の腐敗や外傷が激しく、お顔を見てのお別れが不可能な場合は、特殊な納棺方法で消臭し、棺の蓋を開けてお花や副葬品を納めていただけるように処置を行ないます。
エンバーミングとエンゼルケアはどう違う?
ご遺体の処置に関して「エンゼルケア」という言葉もありますが、エンゼルケアとエンバーミングは目的も処置の範囲も異なります。
エンゼルケア(死後処置)とは、死後に病院などで行なわれる処置です。
「目や口を閉じる」「口腔・鼻腔のケア」「身体の清拭」「体液漏れ防止対策」などにより、主に“表面的に”姿を整えます。
一方、エンバーミングは表面だけでなく体内まで処置を行ない、ご遺体の防腐・殺菌・感染症防止・修復を主な目的としています。
エンバーミングが必要なケースは3つ
エンバーミングが必要なケースは、主に以下の3つです。
① 火葬までに時間が必要なケース
「親族が海外にいる」「事情により葬儀がすぐに行なえない」といった理由から、火葬までの時間が長くなるケースです。
ドライアイスや冷蔵庫を使用してもご遺体の腐敗は徐々に進んでしまうため、エンバーミングを行なって腐敗の進行を抑え、ご遺体を生前に近い姿に維持します。
② ご遺体を海外から空輸で搬送するケース
旅行や出張で海外に行かれた方が亡くなった時や、他国の方が日本で亡くなった時などは、ご遺体を航空機で搬送することがあります。
安全上の観点から航空機内では必要量のドライアイスを使用できないため、エンバーミングが必須となります。
③ 元気だったころの姿で見送りたいケース
解剖や交通事故などにより傷や損傷がある、療養生活で顔が痩せ細ってしまった、点滴や薬の影響で顔がむくんでいるなど、故人様の見た目が生前と大きく変わってしまう例は少なくありません。
エンバーミングによって、「元気だったころの姿にできるだけ近づけたい」「美しいお顔で皆にお別れをしてもらいたい」というご遺族のご要望を叶えられるのです。
エンバーミング処置の手順
ここからは、エンバーミング処置の手順について詳しく解説します。
所要時間はおよそ3時間~4時間で、手順は以下の通りです。
・ ご遺体の洗浄と消毒・殺菌
身体の表面の消毒と洗浄を行ないます。
↓
・ 体内の洗浄と防腐処置
ご遺体の一部を1cm~1.5cmほど切開し(小切開と呼ばれ、状況により切開の大きさは変わります)、そこから血液と防腐剤を入れ替えます。
毛細血管まで防腐剤が浸透したご遺体は皮膚の表面に赤みがさし、より生前の姿に近くなります。
↓
・ 体内の残存物の除去
食道、胃、腸内など消化器官に残っている食物や、呼吸器官の痰などの残存物を吸引し、胸や腹腔の体液も除去します。
↓
・ 縫合、修復、洗浄
防腐剤を注入する際に切開した箇所を縫合します。
その際に、顔や身体で損傷している場所があれば修復し、再度全身の洗浄を行ないます。
↓
・ 洗髪や洗顔
ご遺体の洗髪・洗顔、髭剃りなどして、故人様のお顔やその周囲を整えます。
なお、IFSA(一般社団法人 日本遺体衛生保全協会)では厳格な下記の基準に従い、節度を持ってエンバーミングを行なうと定めています。
そのため、刑法190条(死体損壊罪)や、その他の法律には抵触しません。
・本人またはご家族の署名による同意に基づいて行うこと
・IFSAに認定され、登録されている高度な技術能力を持つ技術者によってのみ行われること
・処置に必要な血管の確保、体腔の防腐のために最小限の切開を行い、処置後には縫合・修復すること
・処置後のご遺体を保存するのは50日を限度とし、火葬または埋葬すること
引用元:エンバーミングとは-エンバーミングの法的解釈 | 一般社団法人 日本遺体衛生保全協会
エンバーミングの費用相場はどれくらい?
エンバーミングの費用は、故人様の状態と処置の内容によって大きく異なります。
具体的な料金は、葬儀社や専門業者にお問い合わせください。
費用のことを考えると、「ドライアイスや冷蔵庫で保存してはダメなのか?」という疑問を持つ方も多いようです。
先述したように、ドライアイスや冷蔵庫は腐敗を遅らせる効果はあるものの、エンバーミングのように腐敗を回避することはできません。
長期保存を目的とされる場合は、エンバーミングを行なうメリットは大きいといえるでしょう。
まとめ
今回はご遺体の防腐処置・修復を行なうエンバーミングについて解説しました。
エンバーミングは、事情によりご遺体を長期保存する場合だけでなく、「元気な頃に近い姿で見送りたい」「心ゆくまでお別れをしたい」といったご遺族のご要望を叶えるためのものでもあります。
エンバーミングは直接専門業者に依頼することもできますが、葬儀社を通して手配をする方が多いようです。
ただし、葬儀社によっては対応していない場合もありますので、事前にご確認いただくと良いでしょう。
事前相談については『ご葬儀の事前相談とは?メリットとポイントについて』で詳しくご説明しております。
平安祭典でもエンバーミングのご相談対応やエンバーマーの手配を行なっております。
エンバーミングについて詳しく知りたい方、検討されている方は、ご遠慮なく平安祭典(0120-00-3242)までご連絡ください。