グリーフケア士になるには?資格取得者に試験内容と勉強法をヒアリング
改定日:2023年10月14日 公開日:2023年5月1日
グリーフケアには資格があることをご存じでしょうか?
今回は数あるグリーフケア関連資格の中からグリーフケア士にスポットを当て、資格の内容や取得方法をご紹介します。
平安祭典にもグリーフケア士が在籍しているため、資格取得のための勉強法や試験内容についてヒアリングを行ないました。
資格取得者ならではの意見をご確認いただけますので、グリーフケア士の資格取得を目指されている方は、参考としてお読みいただけますと幸いです。
なお、今回のヒアリングは1級葬祭ディレクターでグリーフケア士の資格も所有している平安祭典の池田有希に実施しました。
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グリーフケア士とはどんな資格?
グリーフケア士は、一般財団法人冠婚葬祭文化振興財団が認可する資格で、保有者はグリーフケアに関する知識や技能を有することが認められます。
※日本で初めて設立されたグリーフケア専門の教育機関である上智大学グリーフケア研究所の監修も受けています。
大切な方を亡くしたとき、人は深い悲しみを感じるものです。
中には悲しみから立ち直れない方もいらっしゃいますが、そういった方の悲しみ(グリーフ)をケアする行為をグリーフケアと呼びます。
とはいえ、グリーフケアのプロセスは人により様々で、また「こうしなければいけない」「こうすれば良い」という明確な方法がある訳ではありません。
また、グリーフケアを学んだからといって、すぐに適したケアができるようになるわけでもありません。しかし、悲嘆経験を味わう「場」や「機会」を確保し、悲嘆者の悲嘆する権利を守るために、グリーフケア士のような資格が存在します。
なお、グリーフケアについては、『グリーフケアとは?ケア方法や悲しみを癒すプロセスについて』にまとめています。
グリーフケアについて詳しく知りたい方は、ぜひご覧ください。
グリーフケア士の資格を取るには
グリーフケア士の資格を取るには、試験に合格しなくてはなりません。
試験には2つの等級があり、グリーフケア士と上級グリーフケア士に分かれています。
ここからは、各試験の概要を見ていきましょう。
グリーフケア士資格
グリーフケア士資格試験の概要は以下の通りです。
※概要は、一般財団法人冠婚葬祭文化振興財団のグリーフケア士資格ページの内容をもとに作成しています。
・受験資格
18歳以上
・試験方式
グリーフケア士資格試験は、試験会場にてインターネット経由で配信する試験形式(CBT試験)により行なわれます。CBT=Computer Based Testingの意味。
・試験会場
委託しているCBT試験の運営会社が契約している試験会場が全国にあり、年末年始を除く月~日の全ての曜日で受験可能です。
試験会場によって異なりますが、1日の中で受験可能な時間帯が複数設定されている場合があります。
※2021年6月現在の試験会場数は約300です。
・出題内容
グリーフケア士テキストから出題されます。
・出題数
50問
・出題形式
グリーフケア士資格試験の出題形式は、〇×形式、穴埋選択形式、記述式です。
・試験時間
60分間
・合格基準
合格基準は70/100で、試験結果の点数は非公表です。
・資格検定料
税込27,500円(テキスト代、受験料、登録料含む)
※試験の結果不合格であった場合、または受験後に取り消す場合であっても受験料等は返還できません。
・テキスト
グリーフケア士テキスト グリーフケアの理論と実際Ⅰ
第一単元 死別と悲嘆
第二単元 グリーフケアの理論と歴史
第三単元 儀礼論と葬制論
第四単元 死を忘れた社会
第五単元 傾聴と物語
第六単元 ケアの代償とセルフケア
第七単元 グリーフケア士の行動指針(ガイドライン)
※試験会場では、テキストを見ながら回答することはできません。
なお、グリーフケア士の資格を取得すると、次の能力を会得できるとされています。
・グリーフケアの基礎知識
・グリーフに気付く能力
・ケアできる人へ橋渡しする能力
上級グリーフケア士資格
上級グリーフケア士の試験は、2023年~2024年に開始される予定です。(2023年5月時点では準備中です)
試験の概要は以下の通りで、概要は一般財団法人冠婚葬祭文化振興財団の上級グリーフケア士資格ページの内容をもとに作成しました。
・受験資格
18歳以上で、グリーフケア士の資格を取得していること
・試験方式
CBT試験(知識能力判定)と実践能力(ワーク判定)が行なわれます。
・資格検定料
税込82,500円(ワーク判定、テキスト代、受験料、登録料含む)
グリーフケア士より上位の資格で、次の能力を会得できるとされています。
・グリーフケア士より深いグリーフケアの知識
・現場においてグリーフケアのサポートや手助けができる能力
平安祭典のグリーフケア士にヒアリング
ここからは、平安祭典に在籍するグリーフケア士の「声」をご紹介します。
先日、グリーフケア士資格試験に合格した平安祭典の池田有希にヒアリングを実施しました。
Q.
グリーフケア士の資格を取ろうと思ったきっかけは?
A.
会社を通じて「互助会が資格制度を創設した」と知らされたことがきっかけです。
私は平安祭典でご遺族のアフターケアの仕事をしているため、実務に活かせると思い受験を決めました。
Q.
いくつかある資格の中でグリーフケア士を選んだ理由は?
A.
会社から私を含むアフターケア業務従事者数名に「試験を受けてみないか?」という提案があり、受験を決めました。
もともと私は大学で臨床心理学を専攻しており、大学院に進んで臨床心理士の資格を取る考えもありました。
大学卒業後に就職しましたが、過去の経験もグリーフケア士を選んだ理由の1つかもしれません。
Q.
試験の何か月前から勉強を始めましたか?
A.
半年ほど前です。
試験が2022年10月28日にあったので、4月頃から勉強を始めました。
Q.
どのような方法で試験勉強をしましたか?
A.
グリーフケア士のテキストを読んで重要そうなところをノートに書きだしたり、アンダーラインを引いたり、勉強方法としては大学受験の勉強のような感じです。
実はグリーフケア士は創設されたばかりの試験なので、過去問がありません。そのため、テキストで勉強するしか方法がないというのが現状なんです。
テキストは172ページあり、グリーフケアの歴史、文化人類学、社会学、心理学など、内容は多岐にわたります。
儀礼などと絡めて書かれていて、心理学の内容だけではありません。
私の場合は大学で学んだ内容と被る部分があったため助かりましたが、専門用語が多く、一から学ばれる方には難しいだろうと思います。
Q.
試験会場はどのような場所でしたか?
A.
日本全国に試験場があり選択できますが、私は三宮(兵庫県神戸市)のテストセンターで受験しました。
様々な資格の試験をPCで受験できるCBT試験(※)の会場だったので、周りの方全員がグリーフケア士の試験を受けているわけではありません。
※Computer Based Testingの略で、コンピュータ(パソコン)を使用して受験する試験のこと
Q.
試験内容は難しかったですか?
A.
平安祭典からは私を含めて4名が受験しましたが、私を含め全員が思っていた以上に難しいという印象を持ったようです。専門用語や横文字が多いので、予備知識がないと意味が分からない部分が多いのだと思います。
〇×形式、穴埋選択形式の問題は勉強した範囲で対応できたのですが、特に専門用語の記述は難しかったです。
試験内容は広く浅くという印象で、 さまざまな知識を身に付け、幅広い対応ができるようにしたいのかな?という印象を受けました。
Q.
グリーフケア士の資格は実務に活かせていますか?
A.
活かせています。
私は、ご葬儀後のお客様のアフターフォローを担当しています。
ご葬儀から2時間~1か月が経ち、落ち着いたころにご自宅を訪問してお困りごとがないか伺ったり、ご葬儀の感想などを聞いて現場にフィードバックしています。
これまでは、知識に裏付けられた仕事をしていたわけではなく、先輩のやり方を見てお客様への対応を覚えていました。
経験に頼って「きっとこれが正しいんだろう」と感覚的に仕事をしていた部分もありましたが、資格を取得したことで理論や知識にもとづいた応対ができるようになり、自信もついたと感じます。
Q.
葬儀社スタッフはグリーフケア士の資格を取得する方が良いと思いますか?
A.
葬儀社スタッフにもいろいろな職種がありますが、アフターケアを行なう職種であれば取得する方が良いと思います。
他の職種の方は資格取得までいかなくとも、重要な部分だけでも勉強すると、より良いサービスにつながるのではないでしょうか。
悲嘆のプロセスなどの知識があると、お客様の悲嘆の状態に合わせた対応ができると思います。
その他のグリーフケア関連資格を取得するには
ここまではグリーフケア士についてご紹介しましたが、その他にも様々なグリーフケア関連の資格があります。
最後に各資格の取得方法を見ていきましょう。
グリーフケアアドバイザー
グリーフケアアドバイザーは、一般社団法人日本グリーフケア協会が認定する講座です。
講座は東京で年に2回(2月~3月、8月~9月)開催され、ネットから申し込みが可能です。
また、講座は2級(初級)、1級(中級)、特級(上級)に分かれており、内容が次のように違います。
※講座の概要は日本グリーフケア協会 | グリーフケア・アドバイザーの内容をもとに作成しています。
■グリーフケアアドバイザー2級(初級)認定講座
講習期間:1日
受験資格:18歳以上(申請時)
受講料:税込55,000円
グリーフケアの基本的な知識を学び、ケアの原則を踏襲するための座学中心の講座です。
■グリーフケアアドバイザー1級(中級)認定講座
講習期間:2日間
受験資格:2級講座の修了認定を受けた方(申請時)
受講料:税込33,000円
複雑な悲嘆に関する事柄やケアといった実践方法についての講義、ゲスト講師の講話や演習など、グリーフケアの実践に欠かせない事柄を学ぶ講座です。
グループワークを通して、受講生同士が交流を持つこともできます。
■グリーフケアアドバイザー特級(上級)認定講座
講習期間:3日間
受験資格:1級講座の修了認定を受けた方(レポート等の評価も考慮)※協会の推薦が必要です。
より深いケアに伴う実践力や技能を高め、グリーフケアのワークショップや講座を開催できる知識・技能・ノウハウを身に付けるための講座です。
申し込みには教会からの推薦が重視され、日本のグリーフケア普及の先駆者として尽力できる方の受講が期待されます。
グリーフ専門士
グリーフ専門士は、一般社団法人 日本グリーフ専門士協会が開催する講座です。
講座は5つに分かれており、それぞれの概要は以下の通りです。
※講座の概要は講座案内 | 一般社団法人 日本グリーフ専門士協会の内容をもとに作成しています。
■グリーフ専門士養成コース(ベーシック)
講習期間:4日間
受講料:税込55,000円(サイト利用登録者は税込49,500円)
死別・離別に伴う悲嘆に関して、全般的な知識と具体的な関わり方を学ぶ講座です。
多角的にグリーフを理解し、大切な方の悲嘆に深く寄り添うための適切な対応を学ぶことができます。
■グリーフ専門士養成コース(音声版ベーシック)
講習期間:16回(音声ファイル)
受講料:税込55,000円(サイト利用登録者は税込49,500円)
スクール代表の井手敏郎氏が語る16回分の音声ファイルと、グリーフ専門士のテキスト(ベーシック)がついた講座です。
ご自宅でご自身のペースで学びながら、グリーフ専門士(ベーシック)の資格を取得できます。
すべての音声ファイルが一度に渡され、音声ファイルはパソコン、タブレット、スマートフォンなどへダウンロードして視聴できます。※資格取得には課題の提出と審査の合格が必須です。
■ペットロス専門士養成コース(ベーシック)
講習期間:4日間
受講料:税込 55,000円(サイト利用登録者は税込49,500円)
ペットロスによる悲嘆に寄り添い、行動ができるよう学習する講座です。
安楽死、ご葬儀、供養など、具体的な事例や課題をもとに、適切な対応を取れるよう学習します。
■グリーフ専門士・ペットロス専門士養成コース(共通アドバンス)
講習期間:8日間(計36時間 ※課題実施時間含む)
受講料:132,000円
親子関係の死別を主なテーマとし、より深くグリーフに寄り添うための講座です。
子を亡くした親の悲しみに接し、適切な対応を取るための考え方などを学習できます。
※参加対象者はベーシックコース修了生です。
※ベーシックに申し込み済みの方はアドバンスにも申し込みできます。
■グリーフ専門士・ペットロス専門士養成コース(共通マスター)
講習期間:8日間(計36時間 ※課題実施時間含む)
受講料:187,000円
自死、事故、犯罪、災害での死別に伴う複雑なグリーフのケアを学ぶ講座です。
深い悲しみに関わるには、支援者自身の深い自己理解が必要になるため、自分自身を徹底的に掘り下げる内容も含まれます。
※ 副読本「アドラー心理学教科書ー現代アドラー心理学の理論と技法ー」税込 2,000円
※参加対象者はアドバンスコース修了生です。
※アドバンスに申し込み済みの方はマスターにも申し込みできます。
グリーフケアカウンセラー
グリーフケアカウンセラーの資格を取得するには、各協会や民会団体が開催する講座の受講が必須です。
グリーフケアカウンセラー養成講座の講習期間や講習の内容、受講費用は、認定する協会や団体によって異なるため、一例をご紹介します。
・GCC:グリーフ・カウンセラー養成講座
「欧米に30年は遅れている」と言われていた日本のグリーフケアを底上げするため、2007年4月に第一回の基礎講座が開講されました。
基礎集中講座、上級講座、トレーニングコースの3講座があり、段階的にグリーフケアを学べます。
まとめ
今回は、ご遺族の悲しみに寄り添うグリーフケア士に焦点を当て、グリーフケアの資格取得について解説しました。
平安祭典に在籍するグリーフケア士にもヒアリングを実施したため、これからグリーフケア士の資格試験を受ける方は、参考にしていただけるのではないでしょうか。
当記事をご覧になった皆様が無事に資格を取得し、グリーフケア士としてご活躍いただくことを心から願っております。